槍ヶ岳 2012年8月31日~9月2日
1日目、早朝兄貴を乗せて平湯へ向かう。駐車場で車を止めここからはバスである。上高地で入山届けを書き投函。いよいよスタートである。この日の目標は槍沢ロッジで距離は約14キロ、標高差300mである。歩く距離は長いが標高差はあまり無いので3日間の中では楽なほうである。それでも14キロは長く、梓川沿いに穂高の山並みを眺めながら、山ガールの華やかな声が聞こえるなか兄貴と二人で黙々と歩く。そのうち梓川の川幅も狭まり谷川となりかけた頃、上高地を出て五時間半、ようやく槍沢ロッジにたどり着いた。
槍沢ロッジ
穂高岳
上高地
2日目の朝が来た。今日も天気はまずまずで雨の心配はなさそうである。今日はいよいよ槍ヶ岳の山頂を目指し残り6キロ、1,800mの標高差を踏破しなければならない。6時半にロッジを出発。本格的な登山道になり、雪渓の上を歩き、沢を渡り、森林限界を超え草原となった道をひたすら登っていく。その草原も姿を消し岩場にさしかかる頃、槍ヶ岳の山頂が姿を現した。実際に自分の目で見るその山頂は非常に大きく険しい。本当にあの頂上に立てるのであろうか。改めて不安になる。その山頂を目の端に捉えながら最後の急登を休み休み登る。そして12時頃には山頂の肩に位置する槍ヶ岳山荘になんとか辿り着いた。目の前には大きな槍の穂先がデンと構えそこによじ登っている登山者の姿もはっきり見える。
受付をすませ荷物を置いて外のテーブルで一息つく。重いのを我慢してザックに入れて持ってきたビールでとりあえず乾杯。山で飲むビールはひときわおいしく疲れた足にしみこんでいくようである。また、この日はたまたま播隆祭(槍ヶ岳を開いた修行僧を記念する祭り)とかで山小屋からお酒が振舞われたので気持ちよくなって明日に備えて眠りにつく。
このような上級者向けの有名な山にひょんなことから登ることになってしまった。もちろんこの山にはいつかは登りたいと思っていたが、もっと山に馴れ自信ができてから挑戦するはずであった。最初は随分躊躇もしたが意を決して挑戦することにした。槍ヶ岳に登る一般的なコースは上高地スタートの都合2泊3日、歩く距離は往復で約40㎞、標高差2,100mである。足が持つか、体調は万全か、岩場は登れるか、天気はどうか、不安をいっぱい抱えるなかで八月後半のその日がやってきた。
山荘で荷物を置き、昼食をとり一休みしてからいよいよ頂上へアタックである。頂上への約百メートルのルートは上り下りが一部を除いて分かれている。岩場の登山道はほぼ垂直に見えそこをよじ登る。本当に急な場所には梯子がかけられ危険な箇所には鎖が設置されている。しかしそこはまぎれもなく絶壁であり、下をみたら足がすくみそうになる。滑落したらまず助からない。しかし周りをみるとそこに取り付いているのはベテランの登山者ばかりでなく、山ガールがいて、年配の婦人がいて、我々のような熟年者も多くいる。がんばらねばと思う。
この頂上のパノラマを満喫すること十分あまり、目の前に見える穂高の方から黒い雲が広がってきて、さっきまで晴れていたのに急にガスがでてきた。下りの梯子に取り掛かろうとしていたらポツリポツリと雨が落ちてきた。ただでさえ怖い下りなのに更に滑りやすくなる。前ではなかなか降りられない若い女の子をベテランらしい人が必死でコーチをしている。我々もそのコーチの声を参考に一歩一歩降りていく。夏とはいえ3000メートルの高地に降る雨は冷たい。ビショビショになりながらもようやく肩の山荘までたどりついたときは本当にホッとした。
この登山のあと階段を下りるのがつらい日が何日も続いた。メタボ対策から始めた山登りではあるがなかなか本来の目的のほうは成果がでない。でもまあ健康つくりの一環と思って気楽に続けていけたら思い、来年は穂高に登りたいと思っているこの頃です。