いよいよ核心のザイテングラートである。ザイテングラートとは岩壁の側面の支稜(しりょう)とのこと。なんでこんな名前がついたのか分からないが感覚は主稜である。天気が悪くガスがかかっていて数十メートル先しか見えないのですごく残念ではあるが、逆に下まで見えたら足が竦んでしまうかもと思った。
 ほとんど岩ばかりのところを這いつくばってよじ登り、鎖にしがみつき、梯子をおそるおそる登って約一時間が過ぎようとしたころ「ホダカ小ヤまで20分」とのペンキの文字が見えてきた。あともう少しだと頑張るがなかなか山小屋が見えてこない。結局山小屋についたのはそれから40分ぐらい経ってからだと思う。とにかく第一難関を突破。

奥穂高岳 2013年9月6日~9月8日

 穂高岳山荘を出発してすぐの一番の難所のハシゴとクサリ場を撮る余裕なし。頂上までずっとこんなのかなと思いゾッとしたが数十メートルでガレ場の道になり一安心。
 途中でピッケルを埋め込んだ不思議なモニュメントがあった。帰ってから調べたら頂上まで後200mの標識だった。そばまで行く余裕が無かったので分からなかった。
槍ヶ岳
 明神、徳沢と足を進め横尾に着いた時はもう昼を回っていた。ここまでは去年歩いたコースで多少は余裕もある。昼食後ゆっくりとコーヒーでも飲みたい気分だがそんなにゆっくりとしていられないので早々に出発。
 涸沢を登ることひとしきり、かなりへとへとになったころようやく涸沢ヒュッテにたどり着いた。時間は5時を回っていた。
 受付を済ませてテラスで乾杯。肩の痛くなるのを我慢して運んできたビールのうまさが体に浸み渡る。
 ここから見えるカールの素晴らしい眺めと明日挑戦するザイテングラートを見比べながらビールが進む。
 明日は天気が下り坂ということだがなんとか頂上を目指したい。
 しばらく行くと沢にかかる本谷橋へ着いた。ここからは少し登りがきつくなるそうなので一休み。そして樹林の間を抜けて行くと涸沢の流れの音が近づき涸沢カールの一部が見えてきた。
 1日目。快晴である。昨日までの土砂降りの雨が嘘のようにいい天気である。もっとも明日、明後日はまた下り坂ということだが...
 朝、5時ごろ小松を出発したがここでもうすぐ10時である。今日の泊まりの涸沢ヒュッテに着くのは4時を回りそうである。もう少し早く出ればよかったなと思いつつ、絵葉書のような風景を楽しみながら梓川沿いに足を進める。
 
 この道は去年の槍ヶ岳登山の時歩いているがその時は男2人で黙々と歩いていたが、今年は従姉が加わってにぎやかである。

槍沢ロッジ

 涸沢カールを登る途中で下を見下ろせば昨晩泊まった涸沢ヒュッテや、先ほど通り過ぎた雪渓が見える。もう1カ月ぐらい後だと絶景の紅葉になるんだろうなと思っていたら急に猿が現れた。こんな高山地帯でどうやって生きているんだろうかなとふと思ってしまう。
 いよいよ奥穂高目指して出発である。キャンプ場への中ほどからカールを登っていく。その分岐点にこのイラスト図があった。これから挑戦するコースがよくわかる。ゴロゴロした岩の道を登っていくと見晴らし台のようになっている大きな岩があった。これを過ぎるとお花畑である。花の盛りの頃を過ぎているので咲いている花は少ないがそれでも疲れた足を和ませるには十分である。
 今回のコースは左図の通りである。1日目に涸沢ヒュッテまでたどり着き、2日目に奥穂高に登って穂高岳山荘に泊まる。3日目にご来光を拝んで上高地に降りる。ごく一般的なコースである。最初は欲張って奥穂高から前穂高に行って岳沢を上高地へ下るコースも考えたがとても急な下りで初めての初心者が通れるようなコースでないのでおとなしく一般的なルートを通ることにした。
 次に来る機会があったらいろんなコースを歩きたい気持ちにさせられる山である。

槍ヶ岳

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 横尾からは去年のコースを外れ、梓川にかかる横尾大橋を渡り涸沢を目指して行く。橋を越えてからは道は少し狭くなったがまだ緩やかな登りで、左側にそびえる屏風岩を眺めながら足を進めて行く。

上高地

 今年の山歩きのメインイベントである穂高岳への挑戦である。去年、初めての本格的な北アルプス登山でいきなり挑戦することになった槍ヶ岳に続いて今年はこの山である。メンバーは去年一緒に槍ヶ岳に登った兄貴に看護師の従姉を加えての3人パーティ。
 穂高連峰は河童橋からの絶景のど真ん中に位置する山で、何十年か前の学生の頃この橋から初めて見上げた時はあの山の頂上に立とうなんて思いは微塵も浮かばなかった。今こうしてその1歩を踏み出そうとしている自分が不思議に思えてくる。

奥穂高岳

途中で見かけた草花

 テラスでの小宴会を終えて食堂で夕食。この辺りの山小屋の食事は町の食堂と遜色のない内容なので満足。ここでもとりあえず乾杯から、ビールが旨い。
 ここ穂高岳はビッグコミックオリジナルに連載されていた「岳」の舞台。映画の撮影でもこの辺りが舞台で原作者の色紙が飾ってあった。連載はもう終わったが楽しみで読んでいたマンガの一つである。三歩はエベレストでどうしているのだろうか?

上高地

 夜中にトイレに起きて空を見たが相変わらず星は見えず。まだ雨が降っていないだけましかな。
翌朝、ご来光はやっぱりだめだったが、朝焼けの光が穂高の山々を一直線に照らしていた。こんな光景は
あまり見たことがなかったのでビックリ!これだけでもここへ来たかいがあるかな。そして問題はあの光の帯の
上までたどり着けるかである。
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 穂高岳山荘を出発して一時間。ようやく頂上の祠が見えてきた。霧が細かな雨に変わってきていてますます視界が悪くなっていたので近くに来るまで全然気付かなかった。
 展望がなく特にジャンダルムを見たかっただけに残念だが、とにかく一度はあきらめかけた奥穂高制覇ができて大満足。
 機会があれば今度は天気のいい日に登りたい。
 ようやくたどり着いた穂高岳山荘。あのザイテングラートをなんとか乗り切ってもう大満足。ここで記念のバッチを購入。自分的に雨はまだ降っていないもののこの天気だし、とりあえず今回はここまででいいかなと内心思っていた。でも、「やっぱり頂上まで行かなきゃ」という声に乗せられて頂上へのアタックを決意、360度の絶景を見ることは無理だがとにかく頂上へ立とうという思いで出発。